2026.06.12
犬の心臓病で最も多い「僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)」。特に小型犬では加齢とともに発症率が高くなり、シニア期には多くの犬で認められます。しかし、「心雑音がある=すぐに薬が必要」というわけではありません。一方で、適切なタイミングで治療を開始することで、心不全の発症を遅らせることができることも分かっています。今回は、無症状の僧帽弁閉鎖不全症における治療開始の考え方について解説します。
僧帽弁閉鎖不全症とは?
心臓の左心房と左心室の間にある「僧帽弁」が変性し、うまく閉じなくなる病気です。弁が閉じなくなると血液が逆流(僧帽弁逆流)し、心臓には余分な負担がかかります。病気が進行すると、
が起こり、最終的には肺水腫などのうっ血性心不全へ進行します。
僧帽弁閉鎖不全症は進行性の病気です。無症状の期間は長く続くことがありますが、
場合があります。実際に、心不全を発症すると予後は大きく悪化し、多くの犬で数か月以内に亡くなることも報告されています。
「症状が出てから治療する」のではなく、「症状が出る前にリスクを評価する」ことが重要です。
ステージB1
心雑音はあるが心拡大や症状は認められない
ステージB2
心雑音があり心拡大も認められるが症状はない
ステージC
心不全を発症
無症状期の治療開始を考えるうえで、レントゲン検査やエコー検査を行い
B1なのかB2なのかを見極めることが最も重要です。
心拡大が認められない場合は、定期検査、経過観察が基本となります。
心拡大が認められる場合には治療開始を検討します。特に有用な薬がピモペンダンです。
ACE阻害薬はどう考える?
ACE阻害薬(エナラプリル、ベナゼプリルなど)は、RAAS(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)の活性化を抑える薬です。ただし、
とされています。
一方で、
などの症例では併用を検討することがあります。
僧帽弁閉鎖不全症は、早期発見と適切なモニタリングによって心不全発症を遅らせられる病気です。
特に、
場合には、心エコー検査による詳細評価をおすすめします。
無症状だから大丈夫ではなく、
「今どのステージなのか」を把握することが、愛犬の将来を守る第一歩です。
定期的な検査で心臓の変化を見逃さず、最適なタイミングで治療を開始していきましょう。