2026.09.23

最近、低気圧の影響か、椎間板ヘルニアが原因と思われるワンちゃんが多く来院していますので、解説をいたします。
椎間板ヘルニアは過去にダックスフンドが流行った時期にはたいへん多くみられました。当時CTやMRIはオーソドックスではなかったため、検査は脊髄造影というレントゲン検査で行い、発症場所をある程度見つけて手術を行っていました。現在CTやMRIは椎間板ヘルニアの診断に欠かせないものとなっています。
当時は手術をせずに内科療法で治療したケースも多く、それでも後肢が麻痺をしてしまった症例でも多くの犬が回復をしていました。
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「突然キャンと鳴いて動かなくなった」
「抱っこすると痛がる」
「後ろ足がふらついている」
「急に立てなくなった」
このような症状がみられた場合、犬の椎間板ヘルニアが原因になっている可能性があります。
椎間板ヘルニアは犬で比較的よくみられる脊椎・脊髄の病気です。
軽症では「背中や腰が痛そう」という症状だけのこともありますが、重症になると足が動かなくなったり、自力で排尿できなくなったりすることがあります。
今回は、犬の椎間板ヘルニアの初期症状・重症度・検査・治療・予防について解説します。
犬の背骨は「椎骨」という骨がいくつも連なってできています。
椎骨と椎骨の間にあるのが椎間板です。
椎間板は背骨に加わる衝撃を吸収するクッションのような役割をしています。
この椎間板が変性し、その一部が飛び出したり膨らんだりすることで脊髄や神経を圧迫・損傷し、痛みやふらつき、麻痺などの神経症状を引き起こす病気が椎間板ヘルニアです。
犬では首に起こる「頸部椎間板ヘルニア」と、胸から腰にかけて起こる「胸腰部椎間板ヘルニア」が代表的です。
椎間板ヘルニアはどの犬種でも発症する可能性があります。
特に注意したい犬種として、
などが挙げられます。
これらの犬種では比較的若いうちから椎間板の変性が起こることがあるため、「まだ若いから椎間板ヘルニアではないだろう」とは限りません。
椎間板ヘルニアというと「後ろ足が動かなくなる病気」というイメージがあるかもしれません。
しかし、初期には麻痺がなく、痛みだけが症状として現れることがあります。
例えば、
などです。
「なんとなくいつもと違う」という変化が、最初のサインであることもあります。
胸腰部の椎間板ヘルニアでは、神経症状の程度をもとに重症度を評価します。
一般的な目安としては次のように分類されます。
| グレード | 主な状態 |
|---|---|
| グレード1 | 痛みはあるが、歩くことができる |
| グレード2 | 後ろ足にふらつきがあるが、自力歩行できる |
| グレード3 | 後ろ足を動かせるものの、自力では歩けない |
| グレード4 | 後ろ足を自分で動かせないが、深部痛覚は認められる |
| グレード5 | 後ろ足が麻痺し、深部痛覚も認められない |
※分類方法にはいくつかの方式があり、実際の重症度は神経学的検査などをもとに獣医師が判断します。
特に重症例では、足先などへの強い刺激を脳が「痛み」として認識できる深部痛覚が残っているかどうかが重要な評価項目になります。
椎間板ヘルニアの中には、短時間で症状が進行するケースがあります。
特に次のような症状がみられる場合は、できるだけ早く動物病院へご相談ください。
✓ 突然立てなくなった
✓ 後ろ足を引きずっている
✓ 足に力が入らない
✓ 歩こうとしても転んでしまう
✓ 強い痛みが続いている
✓ 自力で排尿できない
✓ 数時間のうちに症状が悪化している
特に**「さっきまで歩けていたのに、急に歩けなくなった」**という場合は注意が必要です。
まず行うのが神経学的検査です。
歩き方や姿勢、足の反応、反射、痛みの位置などを確認し、脊髄のどのあたりに異常があるのかを推測します。
必要に応じて画像検査を行います。
背骨の形やほかの病気の可能性を調べるために行います。
ただし、通常のレントゲン検査では椎間板や脊髄そのものを詳細に確認することはできません。
症状が重い場合や手術を検討する場合には、MRIやCTなどの画像検査が必要になることがあります。
これらの検査によって、どの場所で脊髄が圧迫されているのか、どの程度の病変があるのかなどを詳しく調べます。
治療方法は、
「歩けるのか」「麻痺の程度はどのくらいか」「症状が進行しているか」
などによって変わります。
比較的症状が軽く、自力で歩ける場合などでは、状態に応じて内科的治療を選択することがあります。
治療には、
などを組み合わせます。
ここで非常に重要なのが運動制限です。
薬によって痛みが軽くなると、犬は元気になって走ったりジャンプしたりすることがあります。
しかし、痛みがなくなったことと椎間板の状態が完全に治ったことは同じではありません。
獣医師から指示された期間は、運動量をしっかり管理しましょう。
麻痺が強い場合、自力で歩けない場合、症状が急速に進行している場合などでは、手術が検討されます。
手術では、脊髄を圧迫している椎間板物質を取り除き、脊髄への圧迫を解除することが主な目的となります。
どの治療が適しているかは、神経症状の程度、画像検査の結果、発症からの経過などを総合して判断します。
軽い症状に見えても、自己判断で長期間様子を見ることはおすすめできません。
椎間板ヘルニア以外にも、脊髄梗塞、脊髄炎、腫瘍、骨折など、似た神経症状を起こす病気があります。
また、椎間板ヘルニアでは数時間〜短期間のうちに神経症状が悪化することもあります。
特に歩き方に異常がある場合には、早めに診察を受けることをおすすめします。
椎間板ヘルニアが疑われる犬を、症状確認のために無理に歩かせる必要はありません。
また、自己判断で背中を強くマッサージしたり、ストレッチしたりすることも避けましょう。
移動するときには、
「背中を大きく曲げたり、ひねったりしない」
ことを意識し、できるだけ安静な状態で動物病院へ連れて行きましょう。
歩けない場合は無理に歩かせず、体を支えながら移動してください。
残念ながら、椎間板ヘルニアを完全に予防する方法はありません。
特に遺伝的に椎間板が変性しやすい犬種では、生活に気をつけていても発症することがあります。
そのため「段差を使ったから椎間板ヘルニアになった」と単純に考える必要はありません。
一方、日常生活では身体への負担を減らすために、
適正体重を維持する
滑りやすいフローリングにはマットを敷く
爪や足裏の毛を適切に管理する
無理なジャンプや激しい動きを避ける
適度な運動で筋肉量を維持する
といった環境づくりを心がけましょう。
犬の椎間板ヘルニアは、軽い腰痛から重度の麻痺まで、症状の程度に大きな幅があります。
初期には、
「抱っこを嫌がる」
「段差を嫌がる」
「背中を丸めている」
「なんとなく歩き方がおかしい」
といった小さな変化しかみられないこともあります。
一方で、急速に症状が進行し、突然歩けなくなるケースもあります。
特に、
「足を引きずる」
「立てない」
「急に歩けなくなった」
「排尿できない」
といった症状がある場合は、早めの診察が重要です。
「いつもと歩き方が違う」「腰や首を痛がっている気がする」など、気になる症状がありましたら、お早めに動物病院へご相談ください。