2026.09.20
「昨日からごはんを食べていないけれど、もう少し様子を見ても大丈夫かな?」
猫では、この「食べない」という状態に注意が必要です。
猫は犬とは栄養代謝の仕組みがかなり異なり、絶食や急激な食事量の低下によって肝リピドーシス(脂肪肝)という重い病気を起こすことがあります。
今回は、猫特有の栄養学と肝リピドーシスについてご紹介します。
猫は肉食動物として進化してきたため、犬とは必要とする栄養素や代謝の仕組みが異なります。
特に重要なのがタンパク質とアミノ酸です。
猫はタンパク質への依存度が高く、タウリンやアルギニンなどの栄養素を食事から十分に摂取する必要があります。 また、ビタミンや脂肪酸についても猫特有の要求があります。
例えばアルギニンが不足すると、アンモニアを正常に処理できなくなり、重篤な状態につながることがあります。
つまり猫にとって食事は、単に「カロリーを補給するもの」ではありません。猫特有の代謝を維持するために欠かせないものなのです。
ここがとても重要なポイントです。
猫が病気やストレスなどによって食べられなくなると、身体は不足したエネルギーを補うために、体脂肪を分解してエネルギー源として利用しようとします。
ところが、大量の脂肪が一気に肝臓へ運ばれると、肝臓で処理しきれなくなり、肝細胞の中に中性脂肪が蓄積します。
食欲低下・絶食
↓
体脂肪が大量に動員される
↓
脂肪が肝臓へ運ばれる
↓
肝臓で処理しきれない
↓
肝細胞に脂肪が蓄積
↓
肝リピドーシス
という流れです。
特に肥満傾向の猫が急に食べなくなった場合は注意が必要です。肝リピドーシスの多くでは、食欲不振を引き起こす別の病気や出来事が背景にあります。
太っている猫では減量が必要なこともあります。
しかし、
「太っているから、ごはんを半分にしよう」
「食べなければそのうちお腹が空いて食べるだろう」
といった急激な食事制限はおすすめできません。
猫では、急激なカロリー制限や食欲不振そのものが肝リピドーシスのきっかけになる可能性があります。
減量が必要な猫ほど、獣医師と相談しながら必要な栄養を確保し、時間をかけて体重を落としていくことが大切です。
初期には単なる食欲不振に見えることがありますが、進行すると、
などがみられることがあります。
特に「太っていた猫が急に食べなくなって痩せてきた」**という場合は要注意です。
肝リピドーシスでは、「なぜ食べなくなったのか」を調べることも非常に重要です。
背景には、膵炎、胆管・胆嚢疾患、消化器疾患、糖尿病、腎疾患、腫瘍などが隠れていることがあります。また、引っ越しや新しいペットの加入、食事変更などの環境ストレスがきっかけになるケースもあります。
そのため、脂肪肝だけを治療するのではなく、食欲不振を起こした原因を探して治療することが大切です。
診断には、身体検査に加えて血液検査や腹部超音波検査などを行います。
血液検査ではビリルビンの上昇や肝胆道系の異常が認められることがあり、超音波検査では肝臓の腫大や肝実質の変化などを確認します。
必要に応じて、細い針を用いて肝臓の細胞を採取する細胞診や、肝生検を検討する場合もあります。
肝リピドーシス治療の大きな柱が適切な栄養管理です。
「肝臓が悪いからタンパク質を減らした方がいいのでは?」と思われるかもしれませんが、肝リピドーシスでは通常、安易なタンパク質制限は行いません。十分なエネルギーと猫に適したタンパク質を確保することが重要です。
自力で十分に食べられない場合には、鼻から入れるチューブや食道チューブなどを利用して栄養を与えることがあります。
ただし、長期間食べていなかった猫へ急に大量の栄養を与えるとリフィーディング症候群を起こす危険があります。そのため、脱水や電解質異常を補正しながら、少量から徐々に必要量へ近づけていきます。
猫の肝リピドーシスで覚えていただきたいことは、
「猫は食べない状態を放置しない」
ということです。
特に、普段しっかり食べていた猫が急に食べなくなった場合や、肥満傾向の猫、嘔吐・元気消失・黄疸などを伴う場合は、早めの受診をおすすめします。
肝リピドーシスは重症化すると命に関わりますが、早期に原因を見つけ、適切な栄養管理と治療を開始することで回復が期待できる病気です。
① 猫は犬とは栄養代謝が違う
タウリンやアルギニンなど、猫特有の栄養要求があります。
② 猫、とくに肥満猫の急な絶食は危険
食べないことで大量の脂肪が肝臓へ移動し、肝リピドーシスを起こすことがあります。
③ 「食べないから様子を見る」を長引かせない
猫の食欲低下は、肝リピドーシスだけでなく別の病気のサインかもしれません。早めに動物病院へ相談してください。