2026.10.14

「最近、咳が増えてきた」
「寝ているときの呼吸が速い」
「急に苦しそうに呼吸をしている」
このような症状が見られた場合、注意したい病気のひとつが**肺水腫(はいすいしゅ)**です。
肺水腫は、肺の中に液体がたまり、酸素を十分に取り込めなくなる病気です。重症になると命に関わるため、早期発見と迅速な治療が非常に重要です。
今回は、犬の肺水腫について、原因や症状、治療方法、ご家庭でできるチェック方法をご紹介します。
肺は、呼吸によって取り込んだ酸素を血液に送り、二酸化炭素を排出する大切な臓器です。
肺の中には「肺胞(はいほう)」と呼ばれる小さな袋が無数にあり、ここで酸素と二酸化炭素の交換が行われています。
肺水腫になると、肺の組織や肺胞に液体がたまり、正常なガス交換ができなくなります。
その結果、呼吸が速くなったり、苦しくなったりして、重症の場合には低酸素状態に陥ります。
犬の肺水腫は、大きく2つに分けられます。
① 心原性肺水腫(心臓が原因)
犬で特に重要なのが、心臓病による肺水腫です。
代表的な病気が「僧帽弁閉鎖不全症」です。
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の弁がうまく閉じなくなることで血液が逆流する病気で、特に高齢の小型犬に多く見られます。
病気が進行して左心房や肺の血管にかかる圧力が高くなると、血管から液体が漏れ出し、肺水腫を引き起こします。
② 非心原性肺水腫(心臓以外が原因)
心臓病以外にも、肺水腫を起こすことがあります。
例えば、重度のけいれん、感電、気道閉塞、溺水などが原因となる場合があります。
原因によって治療方法が異なるため、正確な診断が大切です。
肺水腫では、次のような症状が見られます。
特に、安静にしているのに呼吸が速い、呼吸が苦しそう、横になれないといった症状は緊急性が高く、すぐに動物病院での診察が必要です。
なお、咳は心臓病などでも見られる症状ですが、咳だけで肺水腫と判断することはできません。
肺水腫の診断では、胸部レントゲン検査が重要な役割を果たします。
正常な肺は空気を多く含むため、レントゲンでは黒っぽく写ります。
一方、肺水腫では肺に液体がたまることで、肺の一部が白っぽく写るようになります。
また、心原性肺水腫では、心臓の拡大や肺血管の変化が認められることもあります。
ただし、肺炎などでも似たような画像が見られるため、レントゲンだけではなく、症状や心臓の超音波検査などを組み合わせて診断します。
肺水腫は緊急治療が必要になることがある病気です。
治療では、まず呼吸状態を安定させることを優先します。
① 酸素療法
酸素室などを使用して酸素を補給し、呼吸の負担を軽減します。
② 利尿薬の投与
心原性肺水腫では、フロセミドなどの利尿薬を使用して、肺にたまった液体を減らす治療を行います。
③ 心臓病の治療
僧帽弁閉鎖不全症などが原因の場合には、心臓の状態に合わせて強心薬やその他の心臓病治療薬を使用します。
④ 入院管理
呼吸困難が強い場合には、入院して酸素投与や投薬を行いながら、呼吸状態や腎機能、電解質などを慎重に確認します。
なお、非心原性肺水腫では原因に応じた治療が必要で、すべての肺水腫に利尿薬が適しているわけではありません。
肺水腫の早期発見に役立つのが、睡眠時呼吸数のチェックです。
ワンちゃんがぐっすり眠っているときに、胸やお腹が上下する回数を数えてみましょう。
胸が上がって下がる動きを1回として、1分間の呼吸数を測定します。
健康な犬では、睡眠中の呼吸数は一般的に1分間30回未満であることが多いです。
睡眠時の呼吸数が継続して30回を超える場合や、普段より明らかに増えている場合には、動物病院に相談しましょう。
特に心臓病を指摘されているワンちゃんでは、毎日の呼吸数を記録することが病状の変化を見つける助けになります。
ただし、呼吸が苦しそうな場合は、回数を測るために受診を遅らせないでください。
心原性肺水腫では、適切な治療によって肺にたまった液体が減り、呼吸状態が改善することがあります。
しかし、原因となる心臓病が残っている場合には、再発する可能性があります。
そのため、症状が落ち着いた後も、内服薬の継続や定期的な心臓検査が大切です。
肺水腫を一度起こしたワンちゃんでは、飼い主さんによる日々の呼吸状態の観察が特に重要になります。
犬の肺水腫は、早期の発見と治療が命を守ることにつながる病気です。
特に高齢の小型犬や、心雑音・心臓病を指摘されているワンちゃんでは注意が必要です。
「最近、呼吸が速い気がする」
「夜になると落ち着いて眠れない」
「いつもと呼吸の様子が違う」
そんな変化に気づいたら、早めに動物病院に相談しましょう。
毎日の小さな変化に気づくことが、大切な家族の命を守る第一歩です。