2026.11.02

「避妊手術や去勢手術は受けた方がいいの?」
「手術をすると病気の予防になるって本当?」
「麻酔や手術のリスクが心配…」
子犬や子猫を迎えた飼い主様から、このようなご相談をいただくことがあります。
避妊・去勢手術には、望まない妊娠を防ぐだけでなく、将来の病気を予防するなどのメリットがあります。一方で、全身麻酔や手術に伴うリスク、術後の体の変化など、知っておいていただきたいデメリットもあります。
今回は、犬・猫の避妊手術・去勢手術について、わかりやすくご紹介します。
避妊手術(女の子)
一般的には卵巣を摘出する手術、または卵巣と子宮を摘出する手術を行います。妊娠を防ぐとともに、発情に伴う変化を抑えることができます。
去勢手術(男の子)
精巣を摘出する手術です。繁殖能力をなくすとともに、男性ホルモンに関連する病気や行動の一部を抑える効果が期待できます。
1. 乳腺腫瘍の発生リスクを低減できる可能性がある
犬では、早期に避妊手術を行うことで乳腺腫瘍の発生リスクが低くなる可能性があります。猫でも、若いうちの避妊手術は乳腺腫瘍の予防に役立つと考えられています。
特に猫の乳腺腫瘍は悪性の割合が高いため、予防が重要です。
ただし、予防効果の大きさや最適な手術時期については、犬種や年齢などによる違いがあります。
2. 子宮蓄膿症を予防できる
子宮蓄膿症は、子宮内に膿がたまる病気です。特に避妊していない中高齢の犬で多くみられ、命に関わることもあります。
子宮を摘出する手術では子宮蓄膿症を予防できます。また、卵巣のみを適切に摘出した場合も、通常は発症を防ぐことができます。
3. 卵巣の病気を予防できる
卵巣を摘出することで、卵巣腫瘍などの病気を予防できます。
4. 発情に伴うストレスや体調変化を軽減できる
犬では発情期の出血や偽妊娠、猫では発情期の大きな鳴き声や落ち着きのなさなどがみられることがあります。
避妊手術によって、こうした発情に伴う変化を抑えられます。
5. 望まない妊娠を防ぐことができる
予期せぬ妊娠や出産を防ぎ、母体への負担や飼育上の問題を避けることができます。
1. 精巣腫瘍を予防できる
精巣を摘出するため、精巣腫瘍の発生を防ぐことができます。
特に精巣が陰嚢内に降りていない「停留精巣」の場合は、腫瘍化のリスクが高くなるため、手術が推奨されます。
2. 前立腺の病気を予防・軽減できる
去勢手術によって、男性ホルモンの影響を受ける良性前立腺肥大・前立腺がんの予防や改善が期待できます。
ただし、すべての前立腺疾患を予防できるわけではありません。
3. 会陰部ヘルニアの発症を予防できる
オス犬は男性ホルモンの影響で次第に臀部の筋肉が薄くなり、破けてしまうと会陰部ヘルニアを発症してしまいます。去勢手術により発症のリスクが軽減されます。
4. 肛門周囲腺腫などの予防につながる
男性ホルモンが関係する肛門周囲腺腫など、一部の病気の発生リスクを減らす効果が期待できます。
5. マーキングやマウンティングなどが減る場合がある
尿によるマーキング、マウンティング、発情中のメスを探す行動などが軽減することがあります。
ただし、これらの行動には習慣や学習も関係するため、手術によって必ず改善するわけではありません。
6. 望まない繁殖を防ぐことができる
意図しない交配を防ぐことができます。
1. 全身麻酔のリスクがある
避妊・去勢手術は、基本的に全身麻酔下で行います。
健康な若い犬や猫では麻酔のリスクは比較的低いものの、ゼロではありません。
安全性を高めるためには、術前の診察や必要な検査、手術中の適切な麻酔管理が重要です。
2. 太りやすくなることがある
手術後はホルモンバランスの変化によって、必要なエネルギー量が減少したり、食欲が増したりすることがあります。
そのため、手術前と同じ量の食事を続けると、体重が増えやすくなる場合があります。
術後は体重を定期的に確認し、食事量や運動量を調整しましょう。
3. 手術に伴う合併症の可能性がある
出血、感染、傷口の腫れ、縫合部のトラブルなどが起こる可能性があります。
特に避妊手術は腹部を切開するため、去勢手術と比較して体への負担が大きくなる傾向があります。
4. 一部の病気のリスクに影響する可能性がある
犬では、犬種や体格、手術時期によって、関節疾患や一部の腫瘍などの発生リスクとの関連が報告されています。
また、メス犬では避妊手術後に大変稀ではありますが、尿失禁がみられることがあります。
そのため、すべての犬に同じ時期の手術が適しているとは限りません。
5. 将来、繁殖ができなくなる
避妊・去勢手術は基本的に元に戻せない手術です。将来的に繁殖を希望する場合は、十分に検討する必要があります。
一般的には、生後6か月前後が手術を検討する一つの目安となります。
ただし、最適な時期は犬と猫で異なり、犬では犬種や成犬時の体格によっても変わります。
特に大型犬では、骨や関節の成長への影響を考慮し、手術時期を慎重に検討する場合があります。
猫では、より早い時期の手術が推奨されるケースもあります。
またマーキングなどの♂特有の問題行動を予防するためには、男性ホルモンの影響を少しでも減らすために、できるだけ早い去勢手術が良いとの見解もあります。
大切なのは、年齢だけで判断せず、その子の成長や健康状態、生活環境に合わせて決めることです。
手術後は、次のような点に注意しましょう。
元気がない状態が続く、何度も吐く、傷口から出血するなどの異常がある場合は、早めに動物病院へご相談ください。
避妊・去勢手術には、将来の病気の予防や望まない繁殖を防ぐといった大きなメリットがあります。
一方で、全身麻酔のリスクや術後の体重管理、手術時期による健康への影響など、考慮すべき点もあります。
大切なのは、メリットとデメリットを理解し、その子にとって最適な選択をすることです。
当院では、犬種・猫種、年齢、体格、健康状態、生活環境などを考慮し、避妊・去勢手術についてご相談をお受けしています。
「いつ手術を受けたらいいの?」
「うちの子は手術をした方がいい?」
「麻酔が心配…」
そんな疑問や不安がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
大切なご家族が、これからも健康で快適に暮らせるよう、一緒に考えていきましょう。