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萩園どうぶつ日和STAFF BLOG

犬の便から見つかる「シニクロミセス」Cyniclomyces guttulatus

写真の中の楕円形に見える菌がシニクロミセスです。

ワンちゃんが下痢をして動物病院で便検査をした際に、**「Cyniclomyces guttulatus(シニクロミセス・グッツラーツス)」**という微生物が見つかることがあります。

あまり聞き慣れない名前なので、

「悪い菌なの?」
「感染症なの?」
「他の犬や人にうつるの?」

と心配になる飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。

今回は、この「シニクロミセス」について分かりやすく解説します。

シニクロミセスとは?

シニクロミセス(Cyniclomyces guttulatus)は、**細菌ではなく酵母の仲間(真菌)**です。

もともとウサギやモルモットなどの消化管に存在することが知られていますが、犬の便からも見つかることがあります。

顕微鏡で便を観察すると、細長い特徴的な形をした酵母として確認されることがあります。

見つかったら病気なの?

ここが一番大切なポイントです。

シニクロミセスが便から見つかったからといって、必ずしもそれが下痢の原因とは限りません。

過去の研究では、慢性的な下痢をしている犬だけでなく、健康な犬からもシニクロミセスが検出されています。

そのため現在では、

「検出された=すぐに治療が必要な病原体」

とは考えられていません。

一方で、一部の犬ではシニクロミセスが大量に増えている場合に、下痢などの消化器症状に関係している可能性も指摘されています。

つまり、シニクロミセスそのものだけを見るのではなく、ワンちゃんの症状や便の状態、ほかの検査結果などを合わせて判断することが重要です。

どんな症状がみられる?

シニクロミセスとの関連が疑われる犬では、

  • 軟便・下痢
  • 慢性的に繰り返す下痢
  • 嘔吐などの消化器症状

がみられることがあります。

ただし、これらの症状はシニクロミセスに特有のものではありません。

寄生虫やジアルジア、食事の影響、腸内環境の乱れ、慢性腸症など、犬の下痢にはさまざまな原因があります。

そのため、シニクロミセスが見つかった場合でも、「これが原因だ」と決めつけず、ほかの原因が隠れていないかを調べることが大切です。

治療することはある?

症状がなく、便検査で偶然少数見つかっただけであれば、必ずしも治療が必要とは限りません。

一方、

「下痢が続いている」
「便中にシニクロミセスが大量に認められる」
「ほかの下痢の原因が見つからない」

といった場合には、獣医師が治療を検討することがあります。

過去の報告では、抗真菌薬の一種であるイトラコナゾールなどによる治療が行われています。

ただし、治療によって便からシニクロミセスがいなくなっても、下痢が改善しない犬もいます。

このことからも、シニクロミセスだけに注目するのではなく、消化器症状全体を評価することが重要だと考えられます。

人やほかの犬にうつるの?

シニクロミセスは、人で感染症を起こす代表的な真菌ではありません。

通常の生活で過度に心配する必要はありませんが、便にはシニクロミセス以外の細菌や寄生虫などが含まれている可能性があります。

排便後は速やかに片付け、手洗いを行うなど、一般的な衛生管理を心がけましょう。

まとめ

Cyniclomyces guttulatus(シニクロミセス)は、犬の便検査でときどき見つかる酵母の仲間です。

健康な犬からも検出されるため、「見つかった=病気」「見つかった=下痢の原因」ではありません。

しかし、下痢が長期間続いていたり、大量のシニクロミセスが認められたりする場合には、消化器症状に関与している可能性も考えます。

大切なのは、便検査の結果だけで判断するのではなく、ワンちゃんの症状や食事、寄生虫検査、その他の検査結果などを総合的に評価することです。

「下痢がなかなか治らない」
「便検査でシニクロミセスが見つかった」

という場合には、お気軽に動物病院へご相談ください。

私はこの菌と下痢の関係について調査をしたことがありますが、菌がいても無症状の子もいますが、慢性的に下痢が多い子にいつかる傾向があると感じられます。

日和見菌という動向を示す菌なので、腸内環境の悪化によりシニクロミセスも増殖し、何らかの悪影響を与えているのではないかと思います。

下記に参考文献について解説します。

Mandigers PJ et al.
“The clinical significance of Cyniclomyces guttulatus in dogs with chronic diarrhoea, a survey and a prospective treatment study.”
Veterinary Microbiology. 2014;172(1–2):241–247.
DOI: 10.1016/j.vetmic.2014.05.018

PubMedで論文を見る

この研究はかなり参考になります。

健康犬140頭と慢性下痢犬を調査したところ、C. guttulatus が大量に検出された割合は、**健康犬18%、慢性下痢犬14%**でした。つまり、単純に「検出された犬ほど下痢が多い」という結果ではありませんでした。

さらに、慢性下痢があり、かつ C. guttulatus を大量排泄していた57頭にナイスタチンを投与しています。

結果は、

  • 36/57頭(63%):菌は消失したが、臨床症状は改善しなかった
  • 21/57頭(37%):何らかの改善
  • そのうち13頭:下痢が2週間以上改善
  • 一部では再発
  • 不完全に反応した犬では、その後の検査で別の下痢の原因も発見

というものでした。

著者らの結論は非常に重要で、C. guttulatus が一次性病原体であるという直接的な証拠はないものの、一部の症例では日和見的に関与している可能性は否定できない、というものです。

これは先ほど作ったブログの「見つかった=下痢の原因ではない」という説明のかなり強い根拠になります。

ちなみに、うちのポテト君は慢性的にシニクロミセスを飼っており、おなかの調子をよく崩します。

シニクロミセスに効く薬を与えると、しばらくの間は収まってくれます。