2026.09.28
愛犬や愛猫をなでているときに、「あれ?こんなところにしこりがあったかな?」と気づいたことはありませんか?
犬や猫の体にできるしこり(腫瘤)には、良性のものから悪性の腫瘍まで、さまざまな種類があります。
「小さいから大丈夫」「痛がっていないから様子を見よう」と考える飼い主様もいらっしゃいますが、見た目や大きさだけで安全かどうかを判断することはできません。
今回は、ペットの体にしこりを見つけたときの対処法や、動物病院で行う検査についてご紹介します。
しこりとは、皮膚や皮膚の下にできる、通常とは異なる膨らみのことです。
代表的なものには、次のような種類があります。
① 脂肪腫
脂肪細胞から発生する良性腫瘍です。中高齢の犬によく見られ、比較的柔らかく、皮膚の下で動くことが多いのが特徴です。
ただし、柔らかいしこりがすべて脂肪腫というわけではありません。
② 皮膚の良性腫瘍
皮脂腺腫や毛包由来の腫瘍など、皮膚にはさまざまな良性腫瘍が発生します。
良性であっても、大きくなったり、出血や炎症を起こしたりする場合には治療が必要です。
③ 悪性腫瘍
肥満細胞腫、軟部組織肉腫、扁平上皮癌などが代表的です。
特に注意したいのが肥満細胞腫です。
肥満細胞腫は見た目が非常に多様で、脂肪腫のように柔らかいものや、虫刺されのように見えるものもあります。
見た目だけでは判断できないため、検査による確認が重要です。
④ 炎症や感染によるしこり
細菌感染による膿瘍や、異物に対する炎症などによっても、しこりができることがあります。また、粉瘤(表皮嚢胞)、皮脂腺腫、と呼ばれる良性のしこりもよくみられます。
腫瘍ではない場合もありますが、適切な治療が必要になることがあります。
次のような特徴がある場合は、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。
ただし、これらの特徴がなくても悪性腫瘍である可能性はあります。
小さくても、柔らかくても、痛みがなくても、安心とは限りません。
新しいしこりを発見した場合は、一度獣医師に相談することをおすすめします。
なお、急激な腫れに加えて呼吸困難やぐったりするなどの症状がある場合は、緊急受診が必要です。
しこりを発見したら、次の4つのポイントを確認しておきましょう。
① しこりの場所を記録する
体のどこにできたのか、写真を撮って記録しましょう。
② 大きさを測る
定規などを使って大きさを測り、日付と一緒に記録しておくと、変化を確認しやすくなります。
③ 変化を観察する
大きさ、色、形、出血の有無などを確認しましょう。
④ むやみに触らない
しこりを強く押したり、何度も揉んだりすることは避けてください。
自宅で針を刺したり、潰したりすることも危険です。
これらの記録は診察時に役立ちますが、記録のために受診を遅らせないようにしましょう。
しこりの診察では、主に次のような検査を行います。
① 視診・触診
しこりの大きさ、形、硬さ、可動性、周囲の組織との関係などを確認します。
ただし、触診だけで良性・悪性を確定することはできません。
② 細胞診(針吸引検査)
細い針をしこりに刺して細胞を採取し、顕微鏡で観察する検査です。
比較的短時間で実施でき、多くの場合、全身麻酔を必要としません。
脂肪腫や肥満細胞腫など、細胞診によって診断できる腫瘍もあります。
ただし、採取できた細胞の量や腫瘍の種類によっては、診断が難しい場合もあります。

うちのエリザベスさんのしこりの検査(針吸引生検)です。結果、表皮嚢胞(粉瘤)でしたので、局所麻酔下切開して内容物を除去後、嚢胞を取り除きました。
内容物は角質などのペースト状のものです。
③ 組織検査(病理組織検査)
細胞診だけでは診断できない場合などに、しこりの一部または全部を採取して詳しく調べる検査です。
腫瘍の種類や悪性度などを調べ、治療方針を決定するための重要な情報が得られます。
④ 画像検査・血液検査
腫瘍の種類や状態によっては、超音波検査やレントゲン検査、血液検査などを追加する場合があります。
悪性腫瘍が疑われる場合には、転移の有無などを確認することも重要です。
すべてのしこりにすべての検査が必要というわけではありません。診察結果に応じて、必要な検査をご提案します。
すべてのしこりに手術が必要なわけではありません。
良性腫瘍で、日常生活に支障がなく、大きさにも変化がない場合は、定期的な経過観察を選択することもあります。
一方、悪性腫瘍が疑われる場合や、急速に大きくなる場合、出血や痛みがある場合などには、外科手術を検討します。
特に悪性腫瘍では、最初の手術で適切な範囲を切除することが重要です。
そのため、可能な場合は手術前に腫瘍の種類を調べ、十分な治療計画を立てる必要があります。
しこりの早期発見には、毎日のスキンシップが役立ちます。
愛犬や愛猫をなでるときには、頭や背中だけでなく、お腹、脇の下、内股、足先なども優しく触ってみましょう。
毛が長い子の場合は、ブラッシングの際に皮膚の状態を確認するのもおすすめです。
また、定期的な健康診断も、飼い主様が気づきにくい異常を発見する機会になります。
ペットの体にできるしこりには、治療を必要としない良性のものから、早期治療が重要な悪性腫瘍まで、さまざまな種類があります。
大切なのは、自己判断で放置しないことです。
しこりが小さいうちに発見し、適切な検査を受けることで、治療の選択肢が広がる場合もあります。
「こんなに小さなしこりで受診してもいいのかな?」
もちろん大丈夫です!
愛犬・愛猫の体に気になるしこりを見つけたら、お気軽にご相談ください。
大切な家族の健康を守るために、早期発見・早期診断を心がけましょう。
最後に特定のしこりができやすい犬種猫種を記載します。
犬
肥満細胞腫
ボクサー、パグ、ボストン・テリア、ラブラドール・レトリーバー
脂肪腫
ラブラドール・レトリーバー、ドーベルマン、ワイマラナー
組織球腫
ボクサー、ダックスフンド、ブル・テリア
皮脂腺腫
コッカー・スパニエル、プードル、シーズー
悪性黒色腫
ミニチュア・シュナウザー、スコティッシュ・テリアなど
※これらは報告されている発生傾向であり、犬種によって必ず発症するという意味ではありません。また、研究対象となった犬の集団によって結果が異なる場合があります。
特に注意したいのが肥満細胞腫です。肥満細胞腫は外見が非常に多様で、良性の脂肪腫などと見分けにくい場合があります。
猫
肥満細胞腫
シャム猫で発生傾向が報告されている
扁平上皮癌
白い毛の猫や色素の薄い猫で、紫外線にさらされる耳や鼻などに発生しやすい
注射部位肉腫
特定の猫種に限らず、注射部位にまれに発生する
猫の注射部位にできたしこりについては、一般的に「3-2-1ルール」が知られています。
接種後3か月以上しこりが残っている
しこりの直径が2cmを超えている
接種後1か月を過ぎても大きくなり続けている
いずれかに該当する場合は、組織検査を検討する目安となります。該当しなくても、気になる変化があれば獣医師に相談してください。