2026.09.28
愛犬や愛猫が突然倒れたり、手足をバタバタさせたり、体を硬直させたりしたら、飼い主さんは驚いてしまうと思います。
このような症状が現れたとき、考えられる原因の一つが「てんかん発作」です。
しかし、発作のように見える症状が、すべててんかんによるものとは限りません。
心臓の病気による失神や睡眠中の異常行動など、てんかん発作と似た症状を示す病気もあります。
今回は、犬や猫の発作について、症状の見分け方や発作が起きた際の対応、動物病院を受診するときのポイントを解説します。
「発作」という言葉は、突然起こる症状を幅広く表す言葉です。
例えば、以下のような症状があります。
これらの症状には、脳そのものに原因がある場合と、脳以外の病気が脳の働きに影響している場合があります。
そのため、発作が起きた際には、どのような症状が、どのような状況で起きたのかを確認することが重要です。
てんかん発作は、脳の神経細胞に異常な電気活動が発生することで起こります。
代表的な症状として、次のようなものがあります。
① 発作が起きる前(前兆・発作前期)
発作の前に、普段とは違う行動が見られることがあります。
ただし、前兆がまったく見られない場合もあります。
② 発作が起きている最中(発作期)
全身性のけいれん発作では、以下のような症状が見られることがあります。
一般的な全身性のけいれん発作は、数十秒から数分程度で治まることが多いとされています。
一方、体の一部分だけに症状が現れる焦点性発作もあります。
③ 発作が治まった後(発作後期)
てんかん発作の特徴の一つが、発作後に普段とは違う状態が続く場合があることです。
例えば、
といった症状が見られることがあります。
発作後の症状は数分で改善することもあれば、数時間以上続く場合もあります。
なお、発作が起きたからといって、必ずしも「てんかん」という病気であるとは限りません。中毒や低血糖、脳の病気などによっても、けいれん発作は起こります。
発作のように見える症状には、てんかん以外の原因が隠れている場合があります。
特に重要なのが、次の3つです。
心臓の病気や不整脈などによって、一時的に脳への血流が不足すると、突然意識を失うことがあります。
これを「失神」といいます。
失神には、以下のような特徴があります。
失神した際にも、手足が突っ張ったり、けいれんのような動きが見られたりすることがあります。
そのため、体がけいれんしたからといって、必ずしもてんかん発作とは限りません。
特に、運動中や興奮時に突然倒れ、短時間で元気になる場合には、心臓や循環器の病気も疑う必要があります。
ただし、これらの特徴だけで、てんかん発作と失神を確実に区別することはできません。
犬や猫は睡眠中に手足を動かしたり、体をピクピクさせたりすることがあります。
夢を見ていると考えられる場合もありますが、睡眠中の異常行動や、睡眠中に起こるてんかん発作との区別が必要になることもあります。
睡眠中の動きなのか、発作なのかを判断するためには、動画を撮影しておくと診断の助けになります。
脊髄や末梢神経、筋肉などの病気によっても、体の異常な動きが現れることがあります。
例えば、
といった症状です。
これらの病気では、異常な動きが起きている間も意識が保たれていることがあります。
ただし、焦点性てんかん発作でも意識が保たれる場合があるため、意識の有無だけでは判断できません。
実際に愛犬や愛猫が発作を起こした場合、飼い主さんには次のような対応をお願いしています。
① まずは安全を確保する
発作中は、自分の意思で体をコントロールできない場合があります。
家具や階段などにぶつかってケガをしないように、周囲の危険な物を取り除きましょう。
無理に抱き上げたり、体を押さえつけたりする必要はありません。
また、発作中に口の中へ手や物を入れることは絶対に避けてください。
② 発作の時間を確認する
発作が始まった時刻と、治まった時刻を記録してください。
発作の持続時間は、治療方針を決めるうえでも重要な情報になります。
特に、けいれん発作が5分以上続く場合は、命に関わる緊急事態となる可能性があります。
5分経過するのを待つのではなく、発作が長引いている場合は速やかに動物病院へ連絡してください。
③ 可能であれば動画を撮影する
発作の診断において、動画は非常に有用です。
動物病院を受診したときには、すでに症状が治まっていることも少なくありません。
発作の様子を動画で確認できると、てんかん発作なのか、失神なのか、その他の異常運動なのかを判断する際の重要な手掛かりになります。
ただし、撮影よりも安全の確保を優先してください。
④ 発作が治まった後も注意する
発作後は、意識がはっきりしなかったり、周囲の状況が分からなくなったりすることがあります。
静かで安全な場所で休ませ、回復するまで様子を確認してください。
発作が治まっても、意識が戻らない場合や、短時間に発作を繰り返す場合は緊急対応が必要です。
発作の原因を調べるうえで、飼い主さんからの情報は非常に重要です。
受診時には、次のようなことを教えてください。
| 確認事項 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 発作の症状 | けいれん、失神、ふらつきなど |
| 発作時の意識 | 呼びかけへの反応があったか |
| 発作の持続時間 | 数秒、数十秒、数分など |
| 発作前の状況 | 睡眠中、起床時、運動中、興奮時など |
| 発作後の様子 | すぐに回復したか、ふらつきなどが続いたか |
| 発作の頻度 | 初めてなのか、繰り返しているのか |
| 投薬歴 | 現在使用している薬やサプリメント |
| その他 | 誤食や中毒の可能性、過去の病歴など |
特に、発作が起きたときの状況や、発作前後の様子は重要です。
また、発作が繰り返し起きている場合には、発生日時や持続時間を記録した「発作日記」をつけることをおすすめします。
次のような場合は、緊急性が高い可能性があります。
発作が自然に治まった場合でも、初めて発作を起こしたときには、できるだけ早く動物病院を受診してください。
特に、発作を繰り返している場合は、原因の精査や治療が必要になることがあります。
犬や猫の発作には、てんかん発作だけでなく、心臓の病気による失神や神経・筋肉の病気など、さまざまな原因があります。
見た目だけで原因を判断することは難しいため、発作が起きた際の状況を詳しく記録することが重要です。
特に覚えておいていただきたいのは、次の4つです。
発作が治まったからといって、必ずしも安心できるわけではありません。
大切な愛犬や愛猫に突然の異常が見られた際には、自己判断せず、動物病院にご相談ください。
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ナルコレプシーとカタプレキシー(情動脱力発作)は、犬のてんかん発作と間違えられることがある神経疾患・症状です。
特にカタプレキシーは、興奮したときに突然倒れるため、てんかん発作や失神との鑑別が重要です。
ナルコレプシーは、睡眠と覚醒を正常に調節できなくなる神経疾患です。
脳内の睡眠・覚醒を調節するオレキシン(ヒポクレチン)という神経伝達物質の働きに異常がある場合があります。
犬では、次のような症状が見られます。
カタプレキシーは、意識が保たれたまま、突然筋肉の力が抜ける現象です。
特に、食事や遊びなど、感情が高ぶる状況で誘発されることがあります。
代表的な症状は以下のとおりです。
ナルコレプシーに伴う代表的な症状ですが、両者は同じ意味ではありません。
| 項目 | てんかん発作 | カタプレキシー |
|---|---|---|
| 発生状況 | 睡眠中や安静時にも発生 | 興奮時や食事中に多い |
| 意識 | 保たれる場合も消失する場合もある | 基本的に保たれる |
| 筋肉の状態 | 硬直やけいれんなど | 突然の脱力 |
| 持続時間 | 多くは数秒〜数分 | 多くは数秒〜数分 |
| 発作後 | 混乱やふらつきが見られる場合がある | 通常は速やかに回復 |
ただし、焦点性てんかん発作では意識が保たれることもあるため、意識の有無だけで鑑別することはできません。
突然倒れる犬を診察する場合、特に重要なのは、倒れる直前の状況です。
食事や遊びなどの興奮が引き金となり、突然力が抜け、短時間で完全に回復する場合には、カタプレキシーを鑑別診断に含めます。
一方、運動中に倒れる場合には、心臓病や不整脈による失神も考慮する必要があります。
診断には、飼い主さんが撮影した発作時の動画が非常に役立ちます。必要に応じて神経学的検査や循環器検査などを実施します。
重要なのは、突然倒れるという症状だけで、てんかん・失神・カタプレキシーを判断しないことです。
