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萩園どうぶつ日和STAFF BLOG

分子標的薬(痛み止め)についての勉強会がありました

分子標的薬ってどんな薬? 犬や猫の「痛み」を和らげる新しい治療

本日は病院内で分子標的薬についての勉強会が行われました。皆様に内容を共有いたします。すでに当院では昨年から数多く使用し、患者様の中にもワンちゃん猫ちゃんに既に使用された方も多いと思います。

「分子標的薬」と聞くと、難しい名前だなと感じるかもしれません。人のがん治療で耳にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。

実は動物医療でも使われていて、がんだけでなく、犬や猫の関節の痛みを和らげる薬もあります。

今回は、分子標的薬のしくみと、関節痛の治療に使う「抗体医薬品」についてお話しします。

■ 分子標的薬は、特定の相手を狙って働く薬です

体の中では、さまざまな物質が情報をやり取りしています。その中には、病気の進行や痛みに関わるものもあります。

分子標的薬は、こうした特定の物質や、その情報を受け取る場所を狙って働く薬です。

たとえば、痛みを強める物質にくっついて、その働きを抑える。がん細胞が増えるための信号を遮る。薬によって、狙う相手も役割も違います。

そのため、「分子標的薬なら、どんな病気にも効く」というわけではありません。

■ 「抗体」を薬として使う方法があります

抗体は、もともと体に備わっている仕組みの一つです。特定の相手を見分けて、くっつく性質があります。

この性質を治療に利用したものが「抗体医薬品」です。分子標的薬には、こうした抗体を使った薬と、より小さな分子でできた薬があります。

いただいた資料にある犬用の「リブレラ」、猫用の「ソレンシア」は、抗体を使って関節の痛みを和らげる薬です。

■ 関節の痛みを強める「NGF」を抑えます

犬や猫では、加齢などに伴って関節に変化が起こり、痛みが続くことがあります。これを「変形性関節症」といいます。

この痛みには、NGF(神経成長因子)という物質が関わっています。NGFは、痛みを感じる神経を敏感にする働きを持っています。

リブレラやソレンシアは、このNGFにくっつき、働きを抑えることで痛みを和らげます。どちらも、基本的には動物病院で月に1回、皮下注射する薬です。毎日の飲み薬が難しい犬や猫にとっても、治療の選択肢になります。

■ 「年だから」と思っていた変化が、痛みのサインかもしれません

関節が痛くても、犬や猫はいつも鳴いて知らせてくれるわけではありません。

例えば、こんな変化はありませんか?

  • 散歩に行きたがらない、歩く速度が遅くなった
  • 寝起きに立ち上がりにくそうにする
  • 階段や段差を避ける
  • 猫が高い場所に上らなくなった
  • 毛づくろいが減った
  • 体を触られるのを嫌がる

「年を取ったから仕方ない」と思っていた行動に、痛みが隠れていることもあります。

ただし、同じような変化はほかの病気でも起こります。まず診察で原因を確かめ、その子に合った治療を考えます。

■ 関節を元どおりにする薬ではありません

ここは知っておいていただきたいところです。

抗NGF抗体薬は、変形性関節症に伴う痛みを和らげる薬です。すり減った軟骨や変形した関節を元に戻す薬ではありません。痛みが軽くなっても、関節への配慮は必要です。

滑りにくい床、段差の少ない生活環境、適切な体重管理も大切です。動きやすくなったからといって急に運動を増やさず、体の状態を見ながら少しずつ調整しましょう。

■ 効果には個体差があります

治療後に、散歩や立ち上がりが楽になる子もいれば、変化がはっきりしない子もいます。1回の注射だけでは十分な効果を判断できない場合もあります。

リブレラでは、1か月間隔で2回の注射を受けてから効果を評価することがあります。継続するかどうかは、改善の程度と体調を確認しながら相談します。

ご自宅での短い動画があると、変化を確認しやすくなります。「歩く様子」「立ち上がる様子」「段差を上る様子」などを、無理のない範囲で記録してみてください。

■ 狙いを定める薬でも、副作用がないわけではありません

「特定の物質を狙う」と聞くと、副作用がないように思えるかもしれません。しかし、分子標的薬にも副作用や注意点があります。内容は薬によって異なります。

ソレンシアでは、かゆみや皮膚炎、脱毛などが報告されています。リブレラでは、食欲や元気の低下、嘔吐・下痢のほか、ふらつき、立ち上がりにくさ、けいれん、飲水量や排尿の変化などに注意が必要です。注射後にいつもと違う様子があれば、動物病院へご連絡ください。

持病や、現在使っている薬・サプリメントも、治療前にお知らせください。ほかの痛み止めとの併用は、獣医師が必要性と安全性を確認して判断します。

■ 目標は、その子が楽に過ごせること

痛みの治療で大切なのは、薬の名前や新しさだけではありません。

気持ちよく散歩ができる。楽に立ち上がれる。好きな場所でくつろげる。そんな毎日の暮らしを支えることが目標です。

分子標的薬は、そのための選択肢の一つです。診察で体の状態を確認し、薬や生活環境の工夫を組み合わせながら、その子に合った方法を考えていきましょう。

「最近、動き方が変わったな」と感じたら、年齢のせいと決めつけずにご相談ください。